大人の「新・性教育」 ~工藤里紗プロデューサーに聞く!~

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テレビ東京では6月27日(土)より9日間連続で、同局のプロデューサー・ディレクター陣による毎日内容が入れ替わる様々なイベント「テレ東無観客フェス2020」を有料配信。人気番組の制作裏側を明かしたり、リモート音楽祭を開催したり、キー局で冠番組を持ったことのないタレントの冠番組を視聴者と考えてみたり…。

6月30日(火)に行われるのは、ずばり“性”の問題を正面から考えるトークショー。インターネットやSNS上で性にまつわる情報を誰でも簡単に知ることのできる現代。それに加え、“コロナ禍”という心身ともに閉ざされた状況の中、家庭で…会社で…社会で「性認識のズレ」故に数々のトラブルが起きているという。そこで今回は“性と向き合ってきたプロ”たちも交え、現代人に必須科目、大人の「新・性教育」を展開していく。

このイベントの発案者・テレビ東京の工藤里紗プロデューサーに企画の意図などを語ってもらう。

・息子との会話でつかめた“性教育”
――性の問題を取り上げることにした経緯をお聞かせください。
「たまたま我が家で韓国ドラマ『梨泰院クラス』ブームがやってきて、登場するトランスジェンダーのキャラクターについて8歳の息子から『トランスジェンダーってな~に?』と質問されたことがあります。『生まれてきた体と、心や気持ちが違う人のことだよ~。男の子の体で生まれても、そうだ! ぼくは男の子だ!! と誰もが思うわけではない、しっくりこない人だっているんだよ』と話しました。息子は『まあ、いろんな人がいるからね~』と軽く受け止めて、ドラマを見ながら『女の子か、男の子か分からなければ、本人にどっちがいい?どう接して欲しいの?って聞いたらいいじゃん』と言ったんです。その時に、こういう会話こそ性教育だな、子どもにも大人にもいま必要な教育だなと感じました」

――「with コロナ時代に必要な『新・性教育』 セクシャルマインドセットをバージョンアップせよ!!」というイベントタイトルにはどんな思いが込められていますか?
「今回のイベントにも出演してくださる、宋美玄先生(産婦人科医・性科学者)とお電話でお話していたら『コロナで未成年の妊娠相談が増えている』とお聞きして、いままで向き合わなきゃと思いつつ、忙しいし逃げてきた“性教育”にこの時期こそ向き合う必要があるのでは? と思ったんです。性教育といっても、=セックス(子供がどうできるか)や生理、精通の話ではなく、もっと広義に『性』をとらえた教育を行いたい、と」

――2児の母親であるSHELLYさんや、かつて工藤さんがドラマ化した漫画「アラサーちゃん」の作者・峰なゆかさん、さらにティーンエージャーから支持されているゆきぽよさんなど、出演者のみなさんはどのような基準で出演を依頼されたのでしょうか?
「実は性別では選んでいません。いいと思った人にたまたま女性が多かっただけのことです。『自分の言葉で性に対するあらゆる話題を話せる』ことが出来て、『媚びない』、『性に対する現代の問題を分かっていて、感覚がバージョンアップされている』と感じる人にお声がけさせて頂きました。決して、トークバトルをしたい訳ではなく、また、“ドヤ!”みたいな『かましあいSHOW』を見せたいわけではないので(笑)」

――みなさんはこのイベントに対して、どんな感想を持っていますか?
「みなさんとお話しすると、どなたも“性的同意”について気になっていました。実はこのイベントについていろいろな方に説明すると、『SEITEKI DOUIって?』みたいなリアクションをされることが多く、『あ~、これがバージョンアップをする必要性があるところだ~』と感じています。実際、バージョンアップは個人の自由ですが、知っておいた方がいいとは思います。女性に対しても良い意味で辛辣なメンバーが揃いました。女性が性に対してうやむやにすることで利益を得ていたものを見直す機会にもなると思います」

・言語化することが令和の解決策
――出席者の顔ぶれを考えると、かなり“突っ込んだ”話も飛び出しそうですね。
「どうでしょうか(笑)。我々世代もそうですが、意見することで鬱陶しいと思われたくないっていう気持ちは誰でもあると思います。でも、皆我慢していたから…と『性に関することを“なあなあ”にしてきた事』が、実は新たな人を傷つけることもあるかもしれない。男女問わず『意見を言う』、『声を出す』って勇気のいる事ですが、言語化することが令和の解決策だと思います。そういうことをみなさんのトークで感じていただけたら」

――改めてどのようなイベントにしたいとお考えですか?
「性に対する『意識が変わるきっかけ』になれば嬉しいです。『そんな、誰かの面白トーク聞いただけで意識なんて変わんないよ!』と思われる方もいるかもしれません。でも、知らない事を知ると無意識でも頭のどこかには残ります。残っていると、知る前と後でやはり変わることになるはずなので」

――まさしく“種まき”ですね
「もうひとつ、『話すきっかけ』になるといいなと思います。ひとりが何人かに話して、そのひとりがまた誰かに話せば、性に関する悩みも話せるようになるかもしれないので。家庭でも性に関することは話しにくいですが、親が悪い例を『こんなことは良くないね』と話すだけで、相談しやすい空気が出るかもしれません。一ミリも話題にできないのか、一ミリぐらいなら話せそうか。この違いは大きいです。
生きづらい人が少し生きやすくなる、悩みや問題を抱え込み独りぼっちだった人が、話すことでひとりでなくなる。そんな事が、小規模であっても起きればこのイベントも意味があると思います」

――どのような方にこのイベントを視聴してほしいでしょうか?
「親にバイアスがかかっていると、子どもも影響されてしまいます。タイトルで、『いや~、ちょっと…』と引いてしまう方もいるかもしれませんが、ぜひ、世のお父さんお母さんに見てほしいです!
次に、リーダー、管理職、人を束ねる人に見てほしい。そういうポジションの人の理解が広いと相談しやすくなるし、問題が発見できて、そのチームの空気が良くなり、一人ひとりが生きやすくなると思うんです。自分が人を傷つける側にならないためにも必要な知識です。世の男性全員に見ていただきたいですし、世の女性全員にも見ていただきたいです。特に、世の中こんなものか…とモヤっとしても声を出しにくい若い女性に見てほしいですね」

・ゼミの授業のようにシリーズ化できたら
――今後も、このイベントを継続するとのこと。チャレンジしたい企画はありますか?
「子どもの性教育どうすればいいの? 生理ってみんなどうしてる? 『性的同意』のリアルな取り方、いろんな夫婦の在り方、SNS時代に気を付けるべき『性トラブル』、セクハラにおびえる管理職の悩み解決します! あげればキリがないですが、ゼミの授業のようにシリーズ化して、いろいろな項目について考えていきたいです。セクシャルマインドセットをバージョンアップする大学の学長的に(笑)。配信イベントだけでなく、学校への出張授業や動画作成、企業向け研修、生理用品や更年期を緩和する商品開発、子どもも利用できるオンラインカウンセリングのシステム作りなど、幅広いジャンルに取り組んでいきたいですね」

――ところで工藤さんがプロデューサーを務める「シナぷしゅ」は民放初の0~2歳向けの番組として話題になりました。テレビ番組を作る上で、工藤さんが大切にしていることとは?
「『やりたいことをやる』、『視聴者を“個人”で意識する』『テレビにはパワーがあるので、声を出しづらい人の事を思いやる』。この3つです。
『やりたいことをやる』ですが、いつも自分のやりたい企画が通る訳ではありませんし、仕事なので趣味とは違います。しかし、例え本意でなくても任された番組の中に、興味を掘り下げていくと『自分が関心あること』がどこかにあるはずです。何か決まった仕事の中でも提案する際は、この関心があることを大切にすべきだと思います。
テレビはマスメディアと言いますが、結局は『個の集合体』つまり『個』です。以前、池上彰さんが講師をされていた報道の勉強会に忍び込んだとき、話しかける際、自分からテレビ(モニターやカメラ)、テレビから視聴者への距離を意識して語りかけると良いとおっしゃっていました。画面の向こうの『個と、その生活』を意識して作るのは大事だと思っていて、『こんな服を着て、こんなお家に住んで、いま飲んでいるのはビールなのか、それとも発泡酒なのか、片足を椅子に上げて携帯いじりながら見ているのか?…』と妄想しています(笑)」

――いま話されたふたつに比べると、3つ目の「声を出しづらい人の事を思いやる」というのは、“生きる上で大切なこと”のようでもありますね。
「テレビに限らず強い立場にいる人は全員大切にすべきことだと思っています。楽しい情報や知らない世界を一気に広めることもできますが、3秒で人の人生を台無しにする可能性があるのもテレビです。個人はもちろん、人種、セクシャリティー、住む地域…。一瞬にして何かに対する“目線”を変えてしまう力があります。だからこそ、声を発しにくい、発しても多くの人に届きにくい人の声に耳を傾けるべきだと思います。難しそうですが、息子にも同じことを、例えば学校というコミュニティに変換して話しているので、実は単純なことかもしれません。
こうして話してみると、いま言ったことは、番組作りだけでなく、今回のイベントにも通じる話のような気がしています」

番組情報

タイトル
「with コロナ時代に必要な『新・性教育』 セクシャルマインドセットをバージョンアップせよ!!」

配信日時
2020年6月30日(火)夜9時~夜10時30分終了予定 ※ライブ配信終了後翌日の23:59までアーカイブ配信
※配信期間中は何度でもアーカイブ視聴可能

チケット料金
1500円(税込)
チケット販売はこちらをご覧ください。

出演者
SHELLY/鈴木涼美(作家・社会学者)/宋美玄(産婦人科医・性科学者)/峰なゆか(漫画家)/ゆきぽよ(モデル・タレント) ※五十音順

プロデューサー
工藤里紗

※この記事はauテレビでも掲載されました。
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